腹痛
お子さんが訴える症状のうち、最も多いものの一つが腹痛です。頻度が高いものは急性胃腸炎や便秘症で、通常は軽症で経過しますがときに強い腹痛を訴えます。
まずはきちんと排便があるかどうかの確認と便の性状(下痢でないか、硬便でないか)を確かめましょう。
吐き気、下痢、発熱も伴う時は急性胃腸炎(多くはウイルス性)が考えられます。
年長児の腹痛にはストレスや不安、日常生活の乱れなど様々な原因からの心因性腹痛や過敏性腸炎などがあります。
それ以外には、普通の風邪、溶連菌感染症、IgA血管症、腎臓尿路の疾患などにより腹痛を訴えることがあります。
すぐに根本的な治療が必要な緊急性の高い腹痛には、急性虫垂炎や腸重積、腸閉塞(イレウス)、精巣捻転などがあります。急に発症し痛みの程度が強い腹痛は、緊急性のある腹痛の場合もありますので、すぐ来院した方がいいかどうかをお電話でご相談ください。
便秘
最近は乳児、幼児の便秘のお子さんが増えています。
食生活や運動不足等の生活習慣の変化によるものと思われますが、原因ははっきりしません。自分も便秘だからそういうものと思いこみ1週間も便秘を放っておく親もたまにいます。薬や浣腸は癖になるから良くないと思っている方もいらっしゃいます。刺激性の便秘薬でなければ、大丈夫癖にはなりません。放っておいて悪化する方がより大変なことになります。便秘はきちんと治療をしないとますます悪化します。たまに虫垂炎と間違えられるようなひどい腹痛で来院する子もいます。
3日間以上便が出ない、排便が少なく腹痛を訴える、排便後に血が出るなどの症状がありましたら、受診してください。
食事に気を付けて良くなることもありますが、改善しない場合は治療が必要です。院内で浣腸により排便した後、小児期に使用しても良いお薬(便を軟らかくして出しやすくする)を処方します。お薬は自力で排便できるようになるまで長期間飲み続けなければならないことが多いです。
腸重積症
急を要する重要な病気です。私たち小児科医は常に見逃さないように気をつけて診察をしています。腸の一部が腸の中に入り込んでしまう病気で、主に生後6か月から2歳頃の乳幼児に多くみられます。突然の激しい腹痛により、泣いては治まりを繰り返すのが特徴で、嘔吐が続く、顔つきがいつもと違う、血便(イチゴジャムのような便)などの症状が出たら、すぐに受診してください。治療が遅れると手術が必要となり、命にかかわることもありますので、夜間でも急病診療所を受診してください。
夜尿症
睡眠中に無意識に排尿してしまう症状で、5歳を過ぎて1週間に1回以上の夜尿が3か月以上続く場合を夜尿症としています。夜尿(おねしょ)は成長とともに自然に治ることが多く、以前は野活や修学旅行の始まる小学校高学年まで治療を待つことが多かったのですが、最近は早期(5歳児頃から)の治療が勧められています。
日常生活では、利尿作用のあるカフェインを含んだ飲み物(コーヒー、お茶など)を避けたり、昼間は規則正しくトイレに行ったり、就寝までの2〜3時間は水分摂取を控えるようにします。就寝前にトイレに行く習慣をつけることも予防につながります。
治療には主に抗利尿ホルモン剤というお薬による方法とアラーム療法という機器を使った療法があります。詳しくはご相談ください。
起立性調節障害
自律神経の働きの乱れによって血圧や心拍の調整がうまくいかず、立ちくらみ、めまい、朝起きられない、全身のだるさ、頭痛、動悸などの症状が現れる病気です。主に小学校高学年から中学生にかけて発症しやすく、思春期の急激な身体の変化や心理的なストレスが関係していると考えられています。朝なかなか起きられず学校へ行けないが、午後になると元気になる、という特徴があり、周囲から「怠けている」「やる気がない」と誤解されがちですが、本人にとっては非常につらい身体的な不調です。
血液検査や尿検査にて異常がない場合は、この病気が考えられます。昼頃から調子が良くなり、夜更かしすることも多いです。まずは規則正しい生活習慣を心がけるようにし、夜寝る前にはスマホやビデオゲームなどをしないように気を付けましょう。それでも改善しない場合はお薬を処方します。
熱性けいれん
よくある病気ですが、家族が最も心配する病気です。発熱に伴って起こるけいれん発作で、主に生後6か月〜5歳くらいまでの乳幼児に多くみられます。突然、手足を突っ張らせて意識を失い、全身が震えるような症状が現れますが、多くの場合は1~2分ほどで自然におさまり、後遺症も残さないことがほとんどです。
けいれんが起きたときは、まず慌てず安全な場所に寝かせ、衣類をゆるめて様子を見守ってください。口の中に物を入れたり、無理に体を押さえつけたりするのは危険です。
初めてのけいれんや、5分以上続く場合、けいれんの後に意識が戻らない場合などは、すぐに救急受診が必要です。
熱性けいれんは多くの子どもが経験するもので、繰り返すこともありますが、年齢とともに自然におさまることがほとんどです。
川崎病
発熱で発症するため、始めは風邪と区別がつきません。特に咳や鼻水などの風邪症状のない乳幼児の発熱は川崎病でないかどうかの診断が重要となります。
全身の血管に炎症が起こる原因不明の病気で、主に4歳以下の乳幼児に多くみられます。突然の高熱が5日以上続くほか、目の充血、唇や舌の赤み、発疹、手足のむくみ、首のリンパ節の腫れなどの症状が現れます。乳幼児の発熱では、必ずBCG部位の変化がないか確認しています。
適切な時期に治療を行わないと、心臓の冠動脈に後遺症(冠動脈瘤)が残る可能性があるため、早期診断・治療が非常に重要です。
診断が確定した場合は、入院のうえで免疫グロブリンの点滴治療やアスピリンの投与が行われます。ほとんどのケースでは、適切な治療により後遺症なく回復します。