1.ウイルス感染症
インフルエンザ
風邪症状を起こす感染症のなかでも、特に全身症状が強いものです。
感染を受けてから1~3日間ほどの潜伏期間の後に、38℃以上の突然の高熱、頭痛、全身倦怠感、筋肉痛、関節痛などが現れ、咳、鼻汁、咽頭痛などの症状がこれらに続き、およそ1週間で軽快します。主な合併症としては肺炎、脳症が挙げられます。通常のかぜ症候群とは異なり急激に発症し、全身症状が強いことが特徴です。
季節性インフルエンザはいったん流行が始まると、短期間に多くの人へ感染が拡がります。二次感染、合併症の予防のためにも、できるだけ早く受診することが大切です。
12月から3月までの冬季に大流行することが多いですが、最近は季節に関係なく小流行しているようです。
なお、インフルエンザは学校感染症に指定されており、発症後5日を経過し、さらに解熱後2日(幼稚園、保育所は3日)を経過するまでは登校(園)停止とされています。
インフルエンザには抗ウイルス薬の治療薬があります。
ヘルペスウイルス感染症
多発する口内炎と発熱の続くヘルペス口内炎、口唇の発疹だけの口唇ヘルペス、体幹に広範囲に発疹が出るものなど、いろいろな症状が出ます。
ヘルペスウイルスが皮膚、口、唇、目、性器などに感染して、液体で満たされた痛みを伴う小さな水ぶくれが現れる感染症です。ヘルペスウイルスは感染力が強く、水ぶくれに直接触れるだけでなく、ウイルスの付いた粘膜や皮膚と接触することによっても感染します。ヘルペスウイルスは感染すると症状が治まった後も体内に潜み続け、体の抵抗力が落ちると再び暴れ出すため、再発を繰り返すという特徴もあります。
治療薬を飲むと早く治ります。
水痘(水ぼうそう)
全身の水疱と軽度の発熱が特徴です。
水痘・帯状疱疹ウイルスに感染して発症します。37~38℃程度の発熱とともに、赤い小さな発疹が現れます。発疹は全身にどんどん増え、水疱になり、かゆみが強くなります。水疱は2~3日で掻かきこわれ、黒褐色のかさぶたになり、1週間程度で治ります。水ぼうそうは治ってもウイルスは長く体の神経節細胞内に留まっているため、数年~数十年後に帯状疱疹(帯状ヘルペス)という病気を発症することもあります。帯状疱疹は左右どちらかの半身に帯状の発疹が出て、かなり強い痛みを伴います。
水痘は感染力が強いので注意が必要です。特に免疫の落ちている子が感染すると重症になり、命を落とすこともあります。
治療薬がありますが、予防接種をしておくことが重要です。
おたふくかぜ(流行性耳下腺炎)
おたふくかぜは、ムンプスウイルスに感染し、耳下腺(両耳の下にある唾液腺)が腫れる病気です。両側が腫れることが多く、顎の下の唾液腺が腫れることもあります。発熱、頭痛もあります。3~5歳頃にかかることが多く、治療薬はなく、対症療法になります。合併症として髄膜炎、睾丸炎などがあり、後遺症として難聴になることがありますので、注意が必要です。
同じ耳下腺が腫れる病気に反復性耳下腺炎があります。こちらは軽症で熱もなく片側だけのことが多く、2~3日で腫れがひけます。
おたふくかぜであっても予防接種をしていると軽くすむので反復性耳下腺炎とまぎらわしいことがあります。最近はエコー検査で判別ができるようになりました。
突発性発疹
突発性発疹は、生後6か月〜3歳頃の乳幼児がかかるウイルス感染症です。
初めての発熱がこの病気であることも多く、季節に関係なく見られます。ウイルスに感染してから約10日間の潜伏期間を経て、咳、鼻水のない38〜40℃の高熱が3〜4日続き、その後熱が下がると発疹が現れます。
発疹は小さな紅斑で、顔から始まり全身に広がりますが、かゆみはなく、数日で自然に消失します。高熱により熱性けいれんを起こすこともありますが、通常は後遺症を残すことはありません。咳や鼻水等の風邪症状は見られませんが、軽い下痢を伴うこともあります。
解熱後発疹が出ている間は機嫌が悪くなることが多いですが、軽症の病気です。
RSウイルス感染症
乳幼児の発熱とひどい咳、喘鳴、鼻水が特徴です。細気管支炎を起こし、喘息様の症状を起こすこともあります。特に未熟児や心臓病などの基礎疾患のある乳児がかかると肺炎などを起こし重症となり、入院を必要とすることがあります。治療薬はありませんが、基礎疾患のある子には重症化を予防する薬があります。
最近妊婦さん用のワクチンが開発され認可されました。
アデノウイルス感染症
高熱が5日位続きますが、咳や鼻水はありません。扁桃の腫脹と扁桃に白苔が付着するのが特徴です。結膜炎を起こすこともあり、プール熱(咽頭結膜熱)の原因ともなります。下痢になることもあります。
治療薬はなく対症療法だけですが、重症になることは少ないです
2.細菌感染症
細菌感染症は抗菌薬が有効ですので、きちんとした診断と治療が必要となります。風邪に細菌感染症が合併することもありますので、発熱が続く場合は自宅で経過をみずに受診することをお勧めします。
溶連菌感染症
発熱と体幹や四肢に赤い発疹が出て、のどが痛くなり、のどや口の中が真っ赤になります。舌も赤くいちごのようなブツブツができます。食べ物を飲み込んだだけでも痛みます。時には、嘔吐、腹痛もみられます。熱やのどの発赤と発疹の特徴により診断できる病気ですが、はっきりしない場合はのどの検査で診断することができます。
治療によって2~3日程度でのどの痛みや発熱、発疹などの症状は治まります。
合併症である腎炎とならないように、抗菌薬を決められた日数きちんと飲みましょう。
マイコプラズマ感染症
高熱とひどい咳がつづく場合はマイコプラズマ感染症が考えられます。マイコプラズマは細菌とウイルスの中間の微生物です。小さい子どもが罹ることは少なく、痰の少ない乾いた咳が長引くのが特徴です。感染経路は咳やくしゃみによる飛沫感染で、感染から発症までは約2〜3週間の潜伏期間があります。
肺炎を起こしますが、重症になることは少なく、抗菌薬で治ります。肺以外にも皮膚の発疹や関節痛などの症状が出ることがあります。最近抗菌薬が効かない耐性菌が増えていますので、効果を見ながら治療を行います。
百日咳
2週間以上の長く続く咳、短く連続する咳こみと咳こみの終わりにヒューと息を吸う発作が特徴です。
感染力が非常に強いため、予防には5種混合ワクチンの早期接種が重要です。ワクチンの効果は年数とともに弱まるため、年長児や成人が感染し、そこから乳児にうつるケースも最近増えています。
カタル期・痙咳(けいがい)期・回復期の3段階に分かれて進行します。初期は咳や鼻水など風邪に似た症状が現れますが、発熱はほとんどありません。次第に乾いた咳が強まり、痙咳期には特有の咳発作が出現します。連続した咳の後に「ヒュー」という音を伴う息継ぎが見られ、嘔吐や顔の赤み、むくみを伴うこともあります。回復期に入ると症状は徐々に軽くなりますが、咳が完全になくなるまでに1〜2か月以上かかることもあります。
乳児では重症化しやすく、酸素投与や人工呼吸が必要になることもあり、まれに命に関わることもありますので、注意が必要です。
尿路感染症
高熱があり、咳、鼻水、咽頭痛など風邪症状がない場合に尿路感染症のことがあります。
尿検査により診断できます。
細菌性の場合は抗菌薬で治癒しますが、繰り返すときには、膀胱尿管逆流症などの尿路系の異常がないかどうかの精査が必要になります。
膀胱炎は、頻尿、排尿痛、残尿感だけで、熱がないことが多いです。
急性中耳炎
風邪症状に耳の痛み、耳垂れを伴うことが多いです。小さい子は風邪から中耳炎になりやすいと言われています。
細菌性中耳炎の場合は抗菌薬にて治療します。
急性副鼻腔炎(蓄膿症)
黄緑色の粘り気のある鼻汁、頬部の発赤、腫脹などの症状が出ます。
抗菌薬にて治療します。